yuuki_yoshino’s diary

ようこそ。自作の詩・随筆・小説・楽曲を置いておきます。

地下鉄の階段を下りて

混乱の中 様々な妄想が浮かんでは消えた

目前にしている状況を整理することができず

夢と現実の境が失われている

 

目黒の天気は曇り

今にも降り出しそうだ

傘を置いてきた

一度 辞めたらどうだろう

人生を? そんな無茶な

 

初夏らしくもなく 寒々としてる

火照る肉体と 冷や汗をかく心

見えた景色は青か赤か

わからないので語れない

 

目黒川に掛かる橋は

車行き交い 人行き交い

葉桜を眺める暇も無い

 

この季節 ああ この季節

私は還るべき街を想う

 

 

時は夕暮れ 夕涼み

夏祭りも近い

十五を越えたら

はしゃぐことも難しくなったが

 

今年は記録的な暑さだそうだ

忙しくて気が付く暇も無かった

どうでも良い ああ どうでも良い

模型みたいな会社

動物の香りのない家庭

顔の無い社会人

味の無い会話

 

摩天楼の下をくぐって

スーツの私、帰ります

カフェには 明るい顔した人が

沢山居たので

腹は減ったが 帰ります

 

 

どうしてどいつもこいつも

意味の無いことに精を出しているのか

楽しいならまだしも

安らぐならまだしも

そいつらは笑顔で居て闘っているようだ

人に揉まれ 組織に揉まれ

当たり前が忘られた世界で

押し合いへし合い 苦しそうに

 

この間 ある女が言っていた

「フットワークが軽いことを売りにしていく」

そうだ

大変だろうが頑張ってな

 

一に勤勉、二に優しさ、三に聡明

だそうである

わからんことを偉そうに

上の奴等は皆そうだ

 

 

トカゲが小さな穴から飛び出した

と思ったら大きなムカデでした

 

それ以来 学校のプールの裏で

トカゲを探すのはやめました

 

プールの下には、コンクリートの柱と

かわいた土の 暗い空間があったなあ

 

体育館の裏の斜面で

木につかまって飛び降りた

 

ああいう訳のわからん隙間が俺の居場所

だったんだなあ

 

大人になれば隙間には居られない

誰かが君を見ているよ

さて、人は人で居続けられるのか?

難しいことだよ それは

 

 

大人になってからわかったことだけど

日陰者は都会に集まるのだ

田舎よりも都会の方がずっと隙間が

多いからね

 

大事なのはどう生きるか じゃなくて

生きるということじゃないか

人が人として生きるということだろう

何がなんでも

君が君として生きなければ

全ては経済の手に墜ちるのだから

 

どいつもこいつも 売れようと必死だ

辛いんだろうな

誰からも必要とされないことが

つまらない自分に

誇りを持ちたくて

大きな金を集めようとしているのだ

 

 

 

ああ、どいつもこいつも

口げんかに必死だ

何かを伝えようとしない 言葉

あるのは憎しみと闘いの本能だけ

気がつかないのだから 質が悪い

君は一体 誰を守ろうとしているの?

人の痛みを自分のものに感じたなら

もっと孤独でなくなるのに

 

 

 

…雨が降ってきた

辺りに靄が湧き立ち

全てを幻想に変えてくれた

 

地下鉄の駅へ

タイルの急な階段を下り

ホームで昔の本を開いた

 

 

 

心に残ったのは

駅のほこり臭い、甘い香り

赤茶けた線路の向いの壁

どこまでも続く暗闇

人々は顔を持たない

心に何を秘めているのか

知る由もなかった

だから俺は本を開いた