人一倍プライドが高く、それでいて強い劣等感を抱き続けている男だった。
金持ちになるための、モテる男になるためのハウツー本をよく読んでいた。
増大する劣等感に打ち勝つべく、一流を目指していた。
でもね、お前の手に入れようとした金や社会的地位や美しい女は、
お前のすばらしい命と美しい心を犠牲にしてでも手に入れる価値のあるものだったろうか?
世間に迎合して、型にはまる努力をするなど、虚しいことだよ。
ずっとずっと高すぎる理想と上手くいかない現実のギャップに苦しんでいたんだよね。
でもね、現代の日本を支配している善悪観を見てみろよ。
忙しく働くのがエライとか、流行のファッションがおしゃれだとか、何もしない男が女に一番嫌われるとか、どれもすぐに色あせてしまうものじゃないのか。
世界に、歴史に、目を向けてみれば、きっと流行り廃りのくだらなさに気づいたはずさ。
でも、本当に苦しいときは、そういう余裕もなくなっていくものね。
俺もずっとお前と同じようなことで苦しんできたから、よく分かるよ。
でも、俺は何もかもあきらめたとしても、命をあきらめることだけはしないよ。
26年と3ヶ月、よく頑張って生きたね。苦悩に立ち向かってきたお前の勇気と努力をたたえたい。
本当にお疲れ様。