yuuki_yoshino’s diary

ようこそ。自作の詩・随筆・小説・楽曲を置いておきます。

映画「君たちはどう生きるか」を観て 2/3

 さて、今作品は全く新しい類の作品であるというより、ジブリ的ななつかしさをたっぷりと含んだ上で、非常にいびつで荒削りな印象を受ける作品であった。そしてまさにその点にこそ、私は大いに勇気づけられたのである。
 彼の筆には、つまり無意識の中には既に「ジブリ的」なものがこびりついていて、それは今更取り外すことができないものである。例えば、年齢に似合わず生活能力がべらぼうに高い幼女とか、この世の仕組みをよく理解していて、生き渡る技巧に長け、やたらに高圧的でぶっきらぼうな年長のお姉さんとか、マシュマロみたいないっぱい居るかわいいけれども世の中に欠かせない役割を担う何かとか・・・。列挙すれば枚挙に暇がないのだが、そういったジブリ定番の描写に今作品は事欠かない。1つ1つのシーンを局所的に見ると、今作品はむしろ定番が多く、規則破りの要素は少なかったはずである。
 今作品の目新しさはむしろ時間性に有る。物語の展開がとにかく目まぐるしい。取って付けたようなシーンも多く有る。物語の本筋に影響を及ぼさない登場人物が多い。本筋に影響を及ぼす人物なのに出演時間が短いキャラクターも居た。一言で言えば、雑なコラージュのように色とりどりかつ雑多で、全体像から個々のパーツが逆算されたような形跡が、どうも見られないのである。私は、計画づくでこういった作品が出来上がったとは思えない。宮崎は今作品の製作にあたって、自らが走らせる筆に作品を全面的に委ねたのだろうと思う。一見すると突飛な描写であったとしても、とにかく自らの内から発したものには違いない。だからその意味が観客に、いや自分にさえ分からなくとも良い。理解してもらおう、良いと思ってもらおう、そういう外的評価を目掛けるようなことをしなかった。だから、宮崎駿という人間の核に迫るなら、選ぶべき映画は恐らく今作である。
 彼の中にあるものが、或いは彼の見る世界がドーンとそのまま提出されているのだ。