yuuki_yoshino’s diary

ようこそ。自作の詩・随筆・小説・楽曲を置いておきます。

2023年1月28日(土)の夢日記  場面2/4「三匹のカニ」

場面2 三匹のカニ

 

場面は一転し、私は一人のおばさんとある民家の屋外のガレージに居た。そこに車はなく、様々な物品がコンクリートの地面に雑然と置かれている。ガレージは、私の実家のものだった。

女が発泡スチロールの箱を開くと、中には水が張ってあり、生きたカニが三匹入っていた。女が、このカニの種類とか性質とか食味について何やら説明をしていた。口調は商売人のそれである。女は、箱を開けたまま少しの間、間仕切りの向こうへ行ってしまった。声はまだ聞こえてくる。すると、箱の中でうごうごしていたカニの足が箱のへりをつかみ、カニが一匹外へ出てきてしまった。私は当然慌てて女を呼ぶが、女は意に介さなかった。

女の説明では、このカニは至極貴重で高価なものだということだった。女は戻ってくるとこのカニを捕らえようとする。しかし、カニは暴れてその手を抜け出すと、三匹ともが別々の方向へゆっくりと逃亡しはじめた。ガレージの門の方へ逃げる一匹のカニを、女は捕まえようとする。しかし、その手をするりするりとかわして、門の下をくぐって出ていってしまった。他のカニを見ると、一匹は壁を登って柵のすき間から庭へと出ていこうとしている。もう一匹は見えない。時刻は夕方である。女の態度は自信なさげに変わっていた。カニ売りの肩書が嘘であったかのように。

カニは元気で、鋭い鎌を持っていた。私は見えていなかった残りの一匹をガレージ内で見つけると、女から渡された木槌でそれをなぐった。すると、そのカニは力なく壊れてしまい、何年も前に死んで風化したような、殻だけの姿になってしまった。我々は庭へ逃げたカニを追い、隣の畑に塀を乗り越えて入った。今や、カニはすさまじい速さで逃げている。女は、これでなぐって気絶させるように、と私に竹ぼうきを渡した。まるで、その竹ぼうきが長年の商売道具であり、そのような使い方をするのが業界では当然であるかのような口ぶりであった。私は言われるままにカニを追った。追って追って、一周回ってガレージに戻ってきた。もう夜になり、もはやカニの所在はわからなかった。目を凝らして見つけたと思っても、それは壁にくっついた葉とか、何か別のものだった。運良くカニの影を見つけても、すぐにゴキブリのような速さで隠れてしまった。ガレージの電気を点けても、大して明るくはならなかった。

女はいつの間にか姿を消していた。私はなぜだかまだ諦めずにカニを探していた。ついにカニのような何かを見つけて咄嗟に手で押さえると、それは柔らかくぺしゃっと潰れた。よく見ると、それはカニの形をした黒革の鞄であった。みじめにつぶれて壊れており、私が先程木槌でなぐったものがこれであったような気がしてきて、私は心底笑ってしまった。

門の方でカニを探していたが、ふと、ガレージの奥へ振り返ると、庭の柿の木がアクリルの天井を上から突き破り、無数の枝々が天井から下がっていた。その枝々に、様々な無数の手袋がはめて干されていた。ガレージは本来は屋内にあるはずの家具やガラクタで一杯になっていた。